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ニセモノの良心

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2008年 11月 16日

ネットタイムなんかやめちまえ

地方局の人間が「ネットタイムなんかやめちまえ」と言い出したら「お前は何を言っているんだAA略」みたいな反応を貰うことだろうと思う。

僕も思う。お前は何を言っているんだ。って。


ちなみに基礎知識。
タイムは、3ヶ月単位で「番組」を購入するやり方。最低CM秒数は30秒で提供表示が出る。
一社提供ならスポンサー名を番組名につける「冠」も可能。「日立 世界ふしぎ発見」みたいな。
この販売方法は、スポンサーにとって番組イメージをスポンサーイメージに投影させることが出来るのが強み(と言われていたが最近じゃあどうだか)。
「ネットタイム」はこれを発局が系列全局分まとめて売っちゃうこと。





 基本的にネットタイムはキー局が系列分をまとめて販売してくれるため、地方局からすれば非常に手がかからない、仕事といえば確認書と請求書を発行するだけという分野だ。
このお手軽さゆえにダイヤモンドとか経済産業省とかたけくまとかから「補助金」と勘違いされたりする。的外れながら、そのツッコミも気分的には分からないでもない。だって汗かいてないし。

 
 さて、その地方局の手軽収益「ネットタイム」なんだけど、これやめたら?って思う。なんでかというと実は理由は数点あって、これが複合的に働くためだ。以下、順番にあげていく。


・そもそも「枠による収支」を見なくなっている
もともとのネットタイムの意義は全国への配信というスポンサーへのメリットと、それによって金額のボリュームを膨らませて番組制作費を回収するという点にある。
もちろん、地方局のネットの時はこの思考法は生きているが、キー局は予算委員会方式をとっているところが多く番組予算とネットタイムはリンクしない。つまりネットタイムの意義はそこまでなく全部スポット売りでもキー局の番組制作には影響しない。


・「売れ残り」という概念がない。
ネットタイムは常に完璧に売り切らなければならない。
しかも供給量は常に一定。市況によって増枠や減枠という作業は考えられない。(市況に合わせてフォーマットいじくられたら地方局が怒る。というかみんな怒る。まぁスポットばらしが得意な系列もあるけど。)

「供給量が一定の商品を常に完売させる。」この条件を満たす販売モデルは1つしかない。
「需要を常に供給より多めにする」ことである。
つまり「安く価格を設定する」。(実際にはここを「代理店各社枠」にしてたが大枠で見ると同じことである。安く渡した枠を代理店が安くバラ売ってたんだし)
しかし番組ごとに決算をしていない現状「原価なんてあってない」ものだし、「その値段で長らく売っていたらその値段が相場」になってしまう。
よって価格の「上方硬直性」をもたらすし、「値下げがナンボでも出来る」構造となる。

結果的に、市況が少しでも悪化すると、とたんに「安売り合戦」になる。


・枠効率が悪い
上記のため、使用しているAタイムの本数とGRPを収入と比較して考えると、スポットの価格と折り合わない。さらに言えば、ネットタイムの価格下落を受けてスポットの料金設定にも影響する。というかしてる。


・キー局とり過ぎ
ネットタイムの配分を売って来たキー局が行うため、キー局有利の配分となる。
なにそのケーキの切り方おいおいみんなで分けるんだぞ?ってツッコミを入れたくなるほどに、キー局がゴソっと持っていく。
しかも「売ってきてやったんだから金払え」って言う。安売りしているくせに何そのジャイアニズム。


・エリアパワーを正確に反映しない。
ケーキを切るのはキー局のため、その分配が恣意的になる。
エリア状況に依存すれば「スポット」:「ネットタイム」の比率は理論的にはどこの局でも同じになるはず。でもそうはならない。
このスポットとタイムの比率が悪くなる(つまりタイム配分で損している)傾向があるのは、往々にして基幹局クラスだ。可哀想。逆に弱小局は多くなる傾向がある。
この恣意的な配分に系列として、弱小局を救済するという意義を求めるならば、まぁ分かる。でもそういう配慮は、キー局が自分の取り分の中から行って欲しいもんである。


・キー局の支配力を高める。
分配の権限があるせいで、キー局の支配力が上がる。
まぁ今更どうでもいいのだけど。既に支配されてまくってるし。




まぁ沢山書いたけど、一番懸念しているのが2番目の理由「安売り」だ。

自分たちの枠を安く売るのなら仕方ない。自局の事と思うからいくらでも安く売ってくれぃ。
ただ、ネットタイムの宿命なんだけどキー局は「地方局の枠をも安売り」しちゃうのである。さらにこれがスポットの市況に影響する。2重の苦しみ。勘弁してくれ。


そもそもで言えば、ネットタイムもスポットもローカルタイムも只の「CM枠」だ。それを商売の都合上で白黒に色分けして塗っていただけで。
でも、その商売の都合で塗ったもののせいで、逆に値崩れを起こすのならやめてしまったほうがいい。
在庫は一元管理すべきなのだ。同じものを二箇所で管理しているから片方が値崩れしているんだ。つまり全部スポットにしてしまえ。ゴールデン帯の番組強制購入縛りとニュースネットワーク縛りさえ掛けていればキー局も問題なかろう。(まぁ1年間はすごい減収にはなるだろうけど)


全部スポットにしたら、少なくとも「完売させる」という、今一番ネックになっている部分から開放される。地方局のスポットデスクに全部投げてしまえ。何故ならそもそもスポットCMの枠は余る、むしろ完売させてはいけないものだからだ(事故や特番に対応できなくなる)。

開放された地方局がもてあます?いいんだよ。ネットタイムの需要があるなら、スポット同時間固定取りかローカルタイムでの引き合いが入るだろうし、余った部分はスポットで普通に使える。A単価は崩れるかもしれないが、元から(ネットタイムで)崩れているんだ。今更気にするところじゃない。

「スポット」:「ネットタイム」の比率で他局より得をしていた局は大変になるけどそれが市場だろ。番販費減額とかでキー局に助けてもらえばいいさ。(投げやり)



まぁ懸念としては、ネットセールスがなくなると地方局が全国放送できなくなる点だけど・・・地方局がやる全国放送ってグロスの売上以外に旨味はほとんどないし(ケーキも切れないし)、商業的側面から見た場合、別にどうでもいいような気がする。
商業的側面以外は・・・いまは地方局は考えてる場合じゃない気もするし。









さて、業界人以外に全く優しくない作文が出来上がったぞ。

by soulwarden | 2008-11-16 00:30


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