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2009年 10月 09日

MIAU政見放送共有の法的リスクを考える

さて、金子さんも無罪となり、何故か「Winny解禁!」と考えるお馬鹿さんたちがネットに溢れちゃったりする昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか?




MIAUの新しい取り組み
政見放送の共有を開始します

まぁ取り組みとしては素晴らしいものだとは思う。
僕はネット選挙解禁には否定的だけど、(反対理由:選挙活動は、法律によってかなりがんじがらめにされている。ネットを選挙活動に利用できるということは、逆に言えばネット上の発言その他、選挙期間中は全て法律に縛られてしまうということに繋がる。別に本人だけならいいけど、その規制は万人に及ぶ。勝手連とみなされるためだ。(し、逆にそこまでしないとやったモン勝ちになる。)ということは、選挙民の身からすると、最初からネットが選挙に使えないという縛りのほうがよっぽどましだ。成りすまし等の陥れも怖いし。)これはアーカイブに強いというネットの特性にあった動きだとは思う。




しかしこの動きについて、著作権法に引っかかるポイントはないだろうか。


まず、政見放送において、著作権に抵触しそうなものを片っ端から上げていく。(あと肖像権は面倒くさいんで除いて考える。まぁ基本問題無しかな。)

1立候補者(代表含む)の演説内容
2シナリオライターや映像制作ディレクターの著作権
3立候補者以外の出演者のコメント
4立候補者以外の出演者の実演権
5頭付けテロップ部分の放送事業者の著作権
6放送事業者の著作隣接権
7映像内で使われた音楽
8金出した選挙管理委員会がなんか口出す権利



こんなところか。


ちなみにMIAUの公式見解は

>今回MIAUが共有した動画は、各政党が選挙のために政策を主張した「政治上の演説」(著作権法第40条)に当たり、著作権者(各政党)の許諾は不要と考えられます。

となっている。

ちなみに著作権法40条はこうだ。

(政治上の演説等の利用)
第四十条 公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。
3 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。


確かにこれにより、
1の「立候補者の演説内容」はクリアしていると考えることが出来る。
また
2の「シナリオライターや映像制作ディレクターの著作権」も、クリアと考えていいだろう。



続いて3。「立候補者以外の出演者のコメント」。例えば共産党の座談会形式みたいな奴のおばちゃんの発言について、著作権が発生する余地はないか?
ま、ただコメント自体は創造性を発揮していないし、する余地はない。台本だし。(共産党の座談会とか超棒読みだし)。ここは先程2の「シナリオライターや映像Dの著作権」に吸収して一緒に処理するのが適切だろう。


じゃあ、3「立候補者以外の出演者の実演権」について。
この棒読みおばちゃんとかは役者として考えることが出来る。
役者=実演家だと捉えると、送信可能化権は、おばちゃんに付随する。


(送信可能化権)
第九十二条の二 実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。

出来上がったテープ自体は、第40条により著作物ではないと推察されるものの、著作隣接権自体は著作権無しでも成立する。(例えば、著作権なんて存在しないバッハやモーツァルトの楽曲を演奏する奏者にも、実演家として隣接権が発生することを考えてみればいい)


ただ、ただの一市民が登場という映像の筋書き通りに考えると、「実演」はしていないことになるのでセーフ。


ということで、4の権利はグレー。決め手は出演者が「役者」なのか「市民」なのか。
(ただ現実問題として、役者だと名乗り出るという政党の顔を潰すようなケースはなかなか考えにくい。)


続いて、5の「頭付けテロップ部分の放送事業者の著作権」
要は最初に表示される「ぐるっと政党名が回るCG」素材について、それを作ったTV局の著作権を侵害している可能性がある。
・・・とは言え頭3秒。
これに侵害だとクレームが来るような可能性は0.01%くらいしかないだろうし、仮にクレームついてもそこだけ編集で外すくらいの話かとなと思う。
つか、これに著作権を主張するのは、TV局としても恥ずかしいと思う。
あと、昔ながらの「ブルーバックに白字」のやつを著作物だと主張する輩がいたら僕はチョップしてやる。




続いて、6「放送事業者の著作隣接権」
これが実は問題だったりする。
要は、この元素材はTV放送である。で、放送事業者には著作隣接権を保有する。(この隣接権は、先程のクラシックの例でも分かるように、元素材が著作権物だろうがなかろうが、関係なく発生する)
ということは、

第九十九条の二 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有する。


つまり、Youtubeにアップする権利を有するのは、元のOA素材を流した著作隣接権者たるTV局が専有することになるため、MIAUの行為は著作隣接権侵害に該当する。

しかし問題になるかといえば・・・これが微妙に難しい。
何故ならTV局にとって、政見放送は自局のものというか、「選挙管理委員会のもの」なのである。
勝手に判断を下すのは非常にためらわれる。
ということで、おそらく選挙管理員会にお伺いを立て、判断待ちとなるであろう。
つまりここで、正式な権利ではないものの、
「8金出した選挙管理委員会がなんか口出す権利」

が顔を出してくる。



順番逆になるけど、最後に7の映像内で使用された音楽について。

これは、JASRACの管理楽曲なのかそうでないのか、実演家は誰なのか、レコード製作会社はいるのか、政党との契約はどうなっていたのか。
この辺り、一切分からない。
最初から「ネットでも使えるフリーの音楽素材」だったら問題はないけど、それ以外の契約ならば(例えば政党が一切を買い取っていた場合、政党の持つ音楽の公衆可能化権を侵害する行為になる。さすがに音楽について40条適用は難しい。)



ざっと考えてこんなところかな。
まとめると、
1立候補者(代表含む)の演説内容→クリア!
2シナリオライターや映像制作ディレクターの著作権→クリア!
3立候補者以外の出演者のコメント→クリア!
4立候補者以外の出演者の実演権→グレー?
5頭付けテロップ部分の放送事業者の著作権→わずかグレー
6放送事業者の著作隣接権→アウト。実際問題としては8に吸収
7中で使われた音楽→わかんね。けど多分フリー素材じゃないとは思うからアウトじゃね?
8金出した選挙管理委員会がなんか口出す権利→6経由で発生。


ということで、MIAUの取り組みは、
選挙管理委員会(テレビ局)もしくは、よくわかんないけど音楽の権利者、それから役者あたりから口を出される可能性はある。


眠たいなか書いたので、権利の抜けや論理の抜け、条文の抜けはあるかも。
ほんと、ぶっちゃけると僕は著作権法あんま詳しくないんで。

まぁ、その辺は賢いインターネッツ諸氏がフィードバックしてくれることと信じて寝ることにする。

おやすみなさい。




しかし今回、このエントリ書こうと色々MIAUのリンクから政見放送沢山見たけど
「再生回数4回」とか・・・色々どうよ?

by soulwarden | 2009-10-09 03:31


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