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ニセモノの良心

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2007年 05月 23日

非親告罪となった著作権法で同人誌はどうなる?

なんか昨日の記事で「同人紙はどうなんだ」って沢山ツッコミが入ってる。
・・・そりゃ、商業規模で営利目的利用をしている場合には要件に当たるだろうねぇ。普通に考えて。

・・・商業ベースの人は、権利者に許可取れば?許諾料の経費が増えるので税金も安くなるよ?
うまくいって当日の打ち上げ代くらい稼ぐか、まぁ持ち出しくらいでやってる人には要件外で関係ないことだし。


つか、非親告罪だろうと親告罪だろうと、儲けようと儲けまいと、他人の権利物を無断で使用することは、既に構成要件をばっちり満たしたれっきとした罪である以上、ある程度の刑法上のリスクはある。中身が猥褻物だったりするともう余計に。(人格権の侵害と受け取られ訴訟の可能性が高くなるし、猥褻物陳列罪は別の刑法リスクだ。)

それなのに、今のところ同人作家が正々堂々刑事罰のリスクを取っているのは、「権利者はどうせ訴えない」とか、タカを括っているからじゃないの?普通に考えて権利者はファンを訴えないし、訴えたらパッシングで大変なことになることを見越して。


 それは正直フェアじゃないとは思うけど、どうだろ?
それともそんな状況に権利者を留めておかないと、何されるか分からない?
・・・まぁ確かにそんな側面もあるわな。

しかし権利者が正当な権利を主張することが出来ない状況というのは、普通に考えて消費者と権利者どちらに比重が偏っているのだろうか?


 権利者に許諾とったら?素直に思う。
「そもそも摸倣から成り立つ」とか「見られたがってる」とか異論はあろうけど、これは「事前に許諾をとる」ことと何等矛盾はしない。
 同人が業界への「才能供給装置」であり、現在の「才能」の多くも同様の経歴を持っている以上、普通に事前に権利処理を行っても、あまり障害がない気がするのだけど、これは甘い読みだろうか?(そしてこれが甘い読みだったら、それこそ「権利者の忍耐の上に成り立つシステム」だったということになる。)もしも権利者が搾取に出たら?それこそバッシングすれば良い。

(業界という場の利益と、個人の利益が相反しているところがあり、そこは事前許諾が降りない可能性をあげているけど、まぁそんな全体主義でなくても)





 さてと、もう1つ補足。
著作権が非親告罪となっても別に心配していない理由。
それはある意味で親告罪という形式は守られるから。



 刑法なんて大学2年以来で、(しかもその単位は落とした)ほぼ素人なので、出来れば書きたくないけど書いとこ。(突っ込みどころは沢山あるかもね。)
 つか、こういうことはナガブロさんに聞いて下さい。



まず、法には法益というものが存在する。
法益っていうのは、法令がある特定の行為を規制することによって保護、実現しようとしている利益のこと。
保護法益とも言い、主として刑法学において用いられる法的概念。以上、ウィキペ先生。


著作権で保護される法益は、
「個人の経済的利益及び人格権」。(さらに発展させると、そのことによる「イノベーションを守ることによる社会の発展」。ただし現在の著作権法がそうなっているかは知らない。)


じゃあ似たような法益を有する窃盗罪で考える。(著作権法も刑法部分を有するので)
ここでの法益は「個人の経済的利益」。(さらに発展させると、その保護による社会安定。)


 さて、被害者がいない窃盗罪はない。
例えば「いや、それ盗まれていませんよ。あげたんです。」って被害者が言えば訴訟に及ぶことはない。(これを覆す判例募集。)
例えばスリでも万引きでも被害者が「別に被害届けは出さないよ」って言えば、犯人は警察に説教されて終わりでしょ?頑張ってもせいぜい1泊するくらいじゃん。




 だったら非親告罪化した著作権法はどうなる?
警察が犯人を挙げました。もちろん権利者抜きでは「犯人の行為で損なわれた法益」が算出できない。権利者のところに警察が来る。その時に権利者が笑って「別にいいですよ」って言う。

さて警察はどうする?

検察に「権利者にハシゴ外されました」と、ありのままを報告し、それでもそのまま起訴を目指すと思う?それとも苦い顔で「権利者がこういってるから今回は目をつぶるけど、気をつけるように」と形ばかりの説諭で済ませると思う?



店が「買い取ってくれたら別にいい。」と許した万引き犯などを想像してみて。起訴と不起訴、果たしてどっちの可能性のほうが高い?
そこには守るべき法益が既にない。すなわち手柄にならない。
この状況で警察が事件化に乗り出すと思う?検察が裁判に出ると思う?
しかも「言論の自由」がすぐ隣にいるのに。


・・・ちょっと考え辛い。ただ、このあたり刑法に詳しい方からのツッコミを待つ。
(追記 : 法益がないところに犯罪がないとの考え方は法学的には法益保護主義という。ただ、具体的判例は不勉強だゴメン。ただ、原理原則なだけにこれに反する判例、知らない。)



僕の結論としては、上記の理由で非親告罪でも、基本的には親告罪のような動きとなる可能性が非常に高い。
つまりこの法改正は、被害届けから始まる刑事訴訟手続きの簡便化と見ることが出来るだろう。



再び同人誌の話に戻ると、この時、元の権利者が笑って「いいよ別に」って言ってくれるかどうかがポイントになる。
・・・これ、何か後ろめたいことある人には怖いだろうね(儲けすぎているとか、原著作者が激怒しそうな内容だとか)。

 現状で権利者が「俺のキャラを勝手に動かして勝手に儲けやがって!」と不満に思っており、かつ今までは「訴訟をする余裕もないし・・・」と諦めていたとすれば、この改正の意図通り

>例えば海賊行為が非常に巧妙になっていたり、あるいは権利者の関係が複雑になっていて、告訴権者による侵害の立証、関係者の調整が困難、あるいは負担が大きな場合が出てきている。あるいは、中小企業やベンチャー企業にとってはなかなか告訴をする人的、資金的な余力がないという場合もあること。あるいは、親告罪というのは刑事訴訟法によりまして犯人を知った日から6か月を経過してしまいますと告訴が不可能になるということで、いろいろ立証の準備をしているうちに6か月を経過してしまうような事態も起こり得るということから、この際、親告罪ではなく非親告罪とするということを検討してはどうかということであります。

となる。今まで手続きの問題で諦めていた法益が権利者の手元に戻る。非常に結構なこと。

逆に「ファンのやることだから」と大目に見てくれるかも。このあたりは分からない。権利者の考え一つだから。

・・・やっぱ許諾取れよ。日本人相手だから日本語通じるし、そんなに難しくないと思うよ。




同人誌は現状で、猥褻物陳列とか脱税と著作権法とか、リスクが無茶苦茶高い世界だ。きちんと処理してない人にとっては。
この著作権法改正は「たかが」非親告罪化するだけ。
しかも、別にこの法律改正で狙われてる対象じゃないし。


逮捕のリスクがちょっとあがる事くらい、今更あんまり気にすることないんじゃない?

by soulwarden | 2007-05-23 01:33


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